シャトージュン セミヨン
山梨・八ヶ岳の麓で栽培されているセミヨン種の葡萄100%使用した白ワイン。華やかな香りと厚みのある飲み口が特徴。樽での熟成を基本とし、年によっては樽発酵も行う。(現在オンラインショップでは2010年のヴィンテージを取り扱い中)。
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揚げてすぐ、カウンターの上で店主である中川 崇さんによって金箸で身二つにされた「あなご」。箸を入れる際に衣と身からじゅわっと音がし、湯気があがる。「熱々のうちに」という店主の言葉も上の空で、すぐにかぶりつきたくなるような迫力をもつ「天麩羅 なかがわ」の大ぶりの「あなご」である。
今回、店で供している「シャトージュン セミヨン 2009」にマリアージュするひと皿として中川さんから提案があったのは「あなご」か「くるまえび」。どちらも江戸前の天麩羅に欠かせない天種である。その心はといえば……何はなくとも"天麩羅ありき"のこの店では、日本酒にワイン、ビールと満遍なく酒類を揃えつつも、各々ごく限られた銘柄しか置いていない。ワインも、この「シャトージュン セミヨン」のフルボトルのほかは白のハーフボトルと赤が1種類ずつあるだけ。つまり、どの一品というよりは「なかがわ」の天麩羅すべてに合うようにとセレクトされたのがこのワインなのだ。なかでもいわばメインたる種、「あなご」や「くるまえび」との相性は言わずもがなという訳である。実は、中川さん自身は酒を一切嗜まない。ではなぜ「シャトージュン セミヨン」が選ばれたのか? 天麩羅の老舗で17年もの修行経験をもつ中川さんには、独立前からその腕に惚れ込んで店を訪れる常連客も少なくない。なかでもワインに精通した人たちから推されたのがこの銘柄だったという。「なかがわ」の天麩羅を長く見守り続け、なおかつ自らもワインと天麩羅の組み合わせを好むという客たちからの太鼓判を得た、鉄壁のマリアージュなのだ。
包丁ではなく金箸を使うのは、身の繊維をつぶさないため。
春なら稚鮎にしらうお、たらの芽などの山菜……定番の天種はもちろんだが、季節の味わいも天麩羅の大きな楽しみである。秋から4月くらいまでの登場となる写真の椎茸は、肉厚で蒸し鮑のような食感と味わいにファンが多い。
すべてのコースのスターターとして登場する「くるまえび」。季節によって変わる衣の比率がなせる、さくっとした食感と中心をレアに残した身のコンビネーションが素晴らしい。
「なかがわ」のカウンターに座ったら、傍らに「シャトージュン セミヨン」を置いて、天麩羅が出た瞬間にすかさず箸を伸ばし、冷たいワインを一気にくっと飲んでみてほしい。職人の技と旬の食材、それにすっと寄り添うワインという、ここでしか出合えない極上のマリアージュが楽しめるはずだ。
「あなご」(コースのなかの一品として、お品書きにあるすべてのコースで味わうことができる。コースは昼¥4,725〜、夜¥6,090〜)、
「シャトージュン セミヨン 2009」フルボトル¥5,250。(全て税込)
茅場町の名店「天ぷら みかわ」で17年修行した店主、中川 崇さんが2004年に開業。お品書きはおまかせ(時価)、松(¥7,350)、竹(¥6,090)、梅(¥4,725。昼のみ)の4つのコースに加え、夜のみ刺身や酢の物も。コースは上記で紹介したくるまえびにはじまり、魚介、野菜と続いて最後は貝柱のかき揚げを白飯、天丼、天茶のいずれかを選んで〆ることができる。もちろん、好みの天種を追加で注文することも可能。茶室を思わせる鉛の壁や焼き物好きというご主人ならではの陶板のカウンターなど、カウンター8席、テーブル2卓のこじんまりとした店内は"職人"による凛とした空気と美意識に貫かれている。来店時は予約がおすすめ。カード使用不可。
DATA
築地 天麩羅 なかがわ
東京都中央区築地2-14-2
電話03-3546-7335
営業時間11:30〜13:00 LO、17:00〜20:00 LO
定休日 月曜