ABOUT WINE

シャトージュンの"いま"を知る

左から志村さん、若林さん。共に勝沼生まれで、中学・高校の同級生だそう。若林さんはシャトージュンの所在地でもある標高の高い菱山地区、志村さんは甲州発祥の地とも言われる岩崎地区に畑をもつ。2人にシャトージュンの甲州に合う料理を聞いてみると「魚料理が合うかな」(若林さん)「いやいや、肉も合うよ。すき焼きとかね」(志村さん)。

栽培した人の顔が見えるボトル

シャトージュンの所在地である山梨・勝沼で70年以上にわたり酒店を営む新田商店の3代目、新田正明さん曰く「以前は消費者の嗜好に合わせたワインが多かったのですが、山梨の醸造家たちの意識が変わってきておもしろくなってきました。風土やぶどうを活かしたワインが続々と生まれています」。シャトージュンについても「県内のワイナリーのなかでも、シャトージュンはぶどうの栽培者との取り組み方が密接。栽培者ごと、畑ごとの違いが際立つ作り方をしていて"今年はどんなワインができるんだろう?"と興味深いですね」と語る。
新田商店の詳細はこちら

シャトージュンのプレミアムシリーズ(甲州、シャルドネ、セミヨン、メルロの4種類)は、ぶどう栽培者の名前と通し番号が明記されている。また、栽培者ごとに醸造の際に使用するタンクや酵母を分けている。数ある山梨のワイナリーのなかでも、特に栽培者との取り組みに熱心といわれるゆえんだ。シャトージュンの醸造責任者、仁林欣也は自らもぶどうを栽培するほか、信頼できる栽培者たちとのワイン造りを進めている。今回はぶどう栽培者に話を伺いながら、栽培者と醸造家が一丸となってワイン造りに取り組むシャトージュンの"いま"をお伝えしたい。

ぶどう作りへの意識を変えたシャトージュンのワイン

シャトージュンに甲州ぶどうをおさめている若林敏彦さんと志村和夫さんは、共に40年近くぶどう栽培に従事している。しかし、ワイン用のぶどうについて意識が高まってきたのはここ数年だという。「食べればすぐ分かる生食用のぶどうと違って、醸造品種はワインになってみないとその年の出来がどうだったかが分からない。シャトージュンと飲食店や販売店も含めて情報交換をするようになってから、ぐっと意識が変わりましたね」(志村さん)。「山梨のワインのなかでも、自分の作ったぶどうが原料、とはっきり分かるのはシャトージュンくらい。それまでに比べて醸造品種への責任感が強く生まれるようになりました。収穫の時期など、ワイナリーからの要望について疑問だった部分が、密接にやりとりするうち"なぜその必要があるのか"がクリアになって、より積極的に改善に気持ちが向かうようになりました。意識の持ち方に関わらず、個人栽培なので生産量は変わりません。だからこそ、その意識がぐっと変化したというのは大きい」(若林さん)。

収穫からまた実がなるまで1年かかるぶどう栽培。醸造品種をよりよくしていくための取り組みは始まったばかりという。「栽培のデータを積み重ねて、あれこれ改良していきたいですね。甲州をはじめ、ほかの品種についても誇れるものを作っていけたら」(2人)。

「少し甘めの味わいが好き、など栽培者自身の好みも醸造に反映させています。自分のぶどうから作られたワインが好みではないと思われたらさみしいですからね(笑)」(仁林)。

プレミアムシリーズのワインには、エチケットの右下にそれぞれロット番号が、また裏ラベルにはぶどう栽培者の名前が記載されている。

栽培者と醸造家が一丸となって作る味わい

栽培者が変われば、当然畑のエリアも変わる。ぶどう、栽培者、地域、そして醸造方法…これらが一体となってうまれるのがシャトージュンのワインだ。栽培者ごとにタンクや酵母を変えるほか、栽培者の好みも作りに反映されていると仁林は語る。「例えば、同じ甲州でも志村さんのワインは旨み成分が強いですし、若林さんのものは糖度が高く柑橘系がより香ります。各々の魅力を引き出しつつ、栽培者の方に"自分のぶどうがおいしいワインになった"と言って頂けるようなワインにしたいと思っています」。

栽培者に寄り添った細やかな醸造が可能なのは、仁林がほぼ一人で作業を行うシャトージュンならでは。「大規模と小規模のワイナリー、それぞれに役割があると思っています。全国すべてのワイナリーが同じスタイルである必要はないですし、逆に言えばシャトージュンでは、この規模でこそ可能となる"栽培者と一丸となったワイン造り"のサイクルやモデルを構築していきたい。私が作りたいのは、主役となるワインではなく、日々の食事ありきの "おいしく、デイリーに飲めるワイン"です。そこを目指すとき、 "これでいいか"ではなく、"これを造ろう"と栽培者と心を合わせて取り組むことに勝るものはないですね」。

同じ醸造家による同じ品種のワインでも、栽培者によって異なった味わいがうまれる…それは"特別"だが、けして"非日常"ではない。「ていねいに作られた上質なワインを、ぜひ日常で楽しんでほしい」というワイナリーの思いが形になったワインだ。次にシャトージュンのワインを手に取る際には、ぜひラベルに書かれた栽培者にも注目してみてほしい。

栽培者の志村さん、若林さんと醸造家の仁林。随時お互いに情報交換をしたり、連絡をとりあったりしているそう。仁林は醸造のほか、写真の自社畑などでぶどう栽培も担当している。