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マリアージュを楽しむ

第十三回シャトージュンとマリアージュするひと皿 庭のホテル 東京 グリル&バー 流の「蟹と蕪のブランマンジェ林檎のサラダ添え」×「シャトージュン甲州 2012」のマリアージュ

シャトージュン 甲州2012 シャトージュンの看板キュヴェであり、Japan Wine Competition 2013においては銅賞を受賞。時期を見極めて収穫された甲州種をステンレスタンクで低温発酵させ、葡萄の果実味をしっかりと反映させた中口タイプのワイン。洋梨、花梨、柑橘類の穏やかな香りとキレのよい酸味を合わせもち、奥行きを感じさせる味わい。葡萄の栽培者は志村一夫氏。
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日本固有の葡萄品種、甲州。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)からワイン用の葡萄品種として2013年に認められたマスカットベーリーAに先駆けて、2010年に日本独自の品種から初めて認可された葡萄だ。今回はシャトージュンの甲州と、四季ある日本ならではの旬の食材を活かしたフレンチのマリアージュをご紹介したい。

日本での甲州の歴史を遡れば1,200年以上。国内で初めて発見された場所といういわれがあり、現在も甲州ワインの特産地として知られているのが山梨だ。山梨・勝沼にワイナリーを構えるシャトージュンにとっても、甲州100%で作るワインはまさに看板ワイン。ひとくちに甲州のワインといっても、近年では味わいに多様な広がりが生まれている。さまざまな醸造法が試みられるなか、樽を使わず作るシャトージュンのワインは葡萄本来の果実味とほんのり感じられる甘さを特徴とする。今回、甲州とマリアージュするひとしなを紹介するのは「庭のホテル 東京」内のフレンチ「グリル&バー 流(りゅう)」。ホテルでは海外からのゲストが約半数にのぼるという。ヨーロッパ産を中心としたワインリストのなかに、シャトージュンの甲州をはじめ6種類ほど日本のワインもオンリストされている。「"和"をコンセプトとして掲げるホテルですので、海外からのお客様にご紹介するという意味も込めて、少しずつ日本のワインを増やしていきたいと考えております」と言うのは「流」のチーフを務める伊藤 隆さん。そう考え始めた矢先に衝撃を受けたのがシャトージュンの甲州だとか。「試飲会で出合い、まず林檎と柑橘類を思わせる豊かな香りに驚きました。口に含むと、葡萄本来の自然な甘みがあり、香りに負けない存在感がある。軽くもなく重くもない飲み口で、全体的なバランスのよさが素晴らしいワインだと感じました」その後、すぐにオンリストを決めたという。


約5mの高い天井と中庭に面した大きなガラス窓が開放感たっぷり(1)。全70席の店内は、8席のカウンターや20名まで対応可能な半個室などを備え、目的やメンバーに合わせて使い分けることができる(2)。新鮮な野菜が好きなだけ食べられるサラダブッフェ付きのランチ(¥1,600~)は女性を中心に大人気。日替わりで20~30種類の野菜が並ぶ(3)。

食材へのこだわりとその本来の魅力を引き出すフレンチが「流」の特徴。シェフの堀内直仁さんは、定期的に農家を訪ねたり、自身の地元・青森の食材を活用したりと、"作り手の顔が見える"食材をふんだんに使用したヘルシーで身体に優しいフレンチを心がけているという。食材にこだわるということは、旬に合わせて食材もメニューも変わるということ。今回甲州に合わせておすすめ頂いた「蟹と蕪のブランマンジェ 林檎のサラダ添え」も、蟹、蕪、林檎がおいしい時期の限定メニューだ。蟹とフロマージュ・ブラン、柚子を混ぜたものに蕪のジュレをのせ、林檎のサラダとサラダバーネット(ハーブ)を添えた見た目にも可愛らしい一品。トップには林檎を乾燥させたチップがあしらわれ、優しい味わいに酸味を効かせている。「日本の葡萄から作られたワインなので、料理も林檎に柚子と日本の果物を合わせました。柚子、林檎、フロマージュ・ブランそれぞれの酸味が甲州のすっきりした酸味とよくマッチします」(堀内シェフ)。強い味わいがぶつかるのではなく、各々の食材の持ち味が軽やかに響き合うさっぱりした料理は、穏やかな余韻が続く甲州との相性が抜群だ。

フレンチ一筋という堀内直仁シェフ。フランス系のホテル「ソフィテル東京」内のメインダイニング「プロヴァンス」や神楽坂のフレンチ「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」などに開業スタッフとして携わったのち、「庭のホテル 東京」のオープンと同時に料理長に就任。食材の探求に余念がなく、休日にはフットワーク軽く作り手の元を訪ねる。厨房には毎日20種類以上の野菜が届くそう。

「堀内シェフの作る前菜は、野菜をメインにしたみずみずしく爽やかなメニューが多い。とがったシャープな酸味ではなく、角のない柔らかな酸をもつシャトージュンの甲州とよく合うんです」とチーフの伊藤さんも続ける。「林檎のフレッシュな酸とワインのみずみずしい酸、蕪とフロマージュ・ブランの柔らかな甘さとワインのほんのりした甘さ。酸味と甘みの2点で通じるものが感じられるマリアージュです。近年、海外からのお客様が日本のワインに寄せる関心も非常に高まっています。お酒を飲まれる方の約半数ほどが日本のワインを所望されますね。特に甲州のポテンシャルの高さに驚かれる方が多いです」(伊藤さん)。特徴やコクを無理に出そうとするのではなく、葡萄本来からくる自然な味わいを忠実に表そうとするシャトージュンの甲州。日本の四季を大切にし、旬の食材の味を活かそうとする料理との相性は云わずもがなといえよう。ワインと料理が強さで張り合うのではなく、お互いの魅力を引き出し合うマリアージュが堪能できるはずだ。「蟹と蕪のブランマンジェ 林檎のサラダ添え」の登場は冬から早春にかけての間だけ。この季節ならではのマリアージュを楽しみつつ、春、夏と「流」を舞台に繰り広げられる四季折々の食材と甲州との"競演"もぜひ心待ちにしたい。

2014年2月末までの季節限定メニュー「蟹と蕪のブランマンジェ 林檎のサラダ添え」(アラカルト¥1,500。流のディナーコース¥5,500の前菜としても登場)、「シャトージュン 甲州2012」(ボトル¥6,000)

庭のホテル 東京 グリル&バー 流(りゅう)

古書店が軒を連ねる神田神保町にほど近い場所に位置し、出版社や大学が立ち並ぶ文化の薫り高い土地にあって、"美しくモダンな和"や"贅沢ではなく上質さ"を掲げ、居心地のよい空間とホスピタリティ溢れるサービスを提供する「庭のホテル 東京」。ホテル内には和・洋ふたつのレストランを備え、「グリル&バー 流(りゅう)」では新鮮な野菜、香り高いハーブ、上質なオリーブオイルや天然塩をふんだんに使ったヘルシーなフレンチと厳選されたワインを提供する。店名は中庭に流れる水と、フランス語で"場所"を意味する"Lieu"からとられたもの。カウンターから半個室までを備え、目的に合わせて活用できるメインダイニング。

DATA 庭のホテル 東京 グリル&バー 流(りゅう)
東京都千代田区三崎町1-1-16 1F
電話 03-3293-1141(「流」直通)
営業時間 6:30~23:00
(朝食 6:30~9:30 LO、ランチ 11:30~14:00 LO、
ティータイム 14:00~17:30、ディナー 17:30~21:30 LO、
ディナータイムのドリンクは22:30 LO)
無休
http://www.hotelniwa.jp/