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マリアージュを楽しむ

第十一回シャトージュンとマリアージュするひと皿 ガンゲット・ラ・シェーブルの「ポーチドエッグの赤ワイン煮」×「シャトージュン マスカットベーリーA -ミレーラベル 夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い-」のマリアージュ

シャトージュン マスカットベーリーA -ミレーラベル 夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い- Japan Wine Competition 2013において銀賞を受賞したワイン。山梨県立美術館所蔵のミレーの絵画をラベルと商品名に冠したシリーズのワインでもあり、こちらは「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」を使用している。山梨県産のマスカットベーリーAを主体としたフレッシュな飲み口のライトボディ。ふだん食べる日常の家庭料理とも好相性だ。
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ワイン好きの方であれば、マスカットベーリーAという葡萄品種をご存知だろう。"日本のワインの父"と呼ばれる川上善兵衛氏がアメリカ種とヨーロッパ種を交配して作り出した"日本生まれ"の黒葡萄のことで、日本で初めて誕生したワイン醸造用葡萄であり、現在も国内最大の生産量を誇る。今回は、シャトージュンのラインナップのなかでも唯一となるマスカットベーリーAを主体にしたワインとそのマリアージュをご紹介したい。

折しも今年、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)がマスカットベーリーAをワイン用の葡萄品種として認定した。この認定を受けると、EU諸国へワインを輸出・販売する際、ラベルに葡萄品種を表示することができる。つまり、"世界に認められた"品種というわけだ(このほかにワイン用品種として登録されている日本産の葡萄は甲州のみ)。しかし、「マスカットベーリーAの魅力を存分に堪能するには、ひと手間がかかる」というのが「ガンゲット・ラ・シェーブル」の吉澤和雄店長の意見。「ガンゲット・ラ・シェーブル」はこの7月に「萬鳥」本店がリニューアルして生まれた"フレンチの居酒屋"だ。オーナーシェフの田口昌徳さんと店長の吉澤さんが、自分たちが本当に行きたくなる店を形にしたというこちら。テーブル席とカウンターを備え、営業時間は14時~23時。料理もワインも、飾らない素朴なラインナップ。フランスの気軽な酒場を表す「ガンゲット」という言葉通り、時間や人数によって自由に楽しめる居酒屋だ。ボトル¥2,500から揃う選りすぐりのワインリストには、カラフェやグラスでも注文可能な銘柄を多く備える。大半が仏産ワインだが、現在3種類ほど日本のワインがオンリストされている。


店長の吉澤和雄さんは一昨年と昨年に続き、今年もシャトージュンのワイナリーを訪問したそう。たずねた時はちょうどデラウェアの収穫の時期だったとか(1)。フランスからやってきたポスターや雑貨が店内のあちこちに。西浅草にあって、気分はさながらパリの裏路地(2・3)。

数少ない日本ワインのひとつが、「シャトージュン マスカットベーリーA -ミレーラベル 夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い-」。今夏に開催された国産ワインコンクールで銀賞を受賞したワインでもある。フレッシュな飲み口のライトボディで、マスカットベーリーA特有の甘くチャーミングなキャンディ香も特徴的だ。このキャンディ香はワイン好きほど好みが分かれる香りでもあり、吉澤さんが「ひと手間かかる」という所以である。「日本のワインがトレンドということもあって、興味をひかれて"ベーリーAを初めて飲んでみようか"というお客様も多くいらっしゃいます。が、お客様の好みによっては"食事と合わない"と思う方もいらっしゃいますし、ボルドーなどの力強いワインと比べてもの足りないと感じる方もいらっしゃいます」。そこで吉澤さんがかける"ひと手間"とは、注文を受けた料理によってワインの温度を調節したり、合わせておすすめのメニューを提案したりといった、マスカットベーリーAの魅力をしっかりと楽しんでもらうための工夫と配慮だ。では、シャトージュンのマスカットベーリーAにおすすめの料理とは何だろう?

テーブルや椅子も「萬鳥」の時から使っているもの。ここで気張って飲もうとするほうが無理!? "外食"していることを忘れるくらいにリラックスしてワインを楽しめるはず。

スタッフ全員集合! 左からオーナーシェフの田口昌徳夫妻に店長の吉澤和雄夫妻、「萬鳥」立ち上げの時から田口シェフのもとで研鑽を積んできた料理担当の塩田大治さん。

「最近では樽熟成などで味わいにコクを出す造り手さんもいますが、シャトージュンは山梨県の人々が一升瓶などで日常的に楽しんできた"地酒"のような軽やかなタイプ。醤油を使った甘じょっぱい家庭料理など、旨みがしっかりある料理が好相性なので、うちでいうと旨みの要素を詰め込んだポーチドエッグの赤ワイン煮がぴったりなんです」。オイルがふつふつとした状態で小さなフライパンのままサーブされるこの料理は、赤ワインソースにベーコンを加え、ソースのなかでポーチドエッグを作ったものだ。ベーリーAのお供にすれば、フォン・ド・ヴォーとベーコンの旨みが層となってキャンディ香を包みこむ。ワインの甘い香りが旨みに内包されて、味わいが口のなかで一体となる……"フレンチの居酒屋"ならではのメニューと日本のワインがぶつかりあって生まれる、このうえないマリアージュといえよう。「自国のワインの魅力を正しくしっかりと伝えること、広めることは、日本のソムリエに課せられた重要な仕事」という吉澤さん。一人でも大勢でも気負わず楽しく飲めるこの居酒屋では、小難しいことを考える必要はない。好きなものを注文すれば、そのワインや料理がベストな状態で味わえるような提案や調整をしてくれる。「お客様に自由な使い方で遊んでほしいですね」。このなんとも楽しい"居酒屋"こそ、シャトージュンのマスカットベーリーAがもつ魅力をじっくりと堪能できる1軒といえるだろう。

「ポーチドエッグの赤ワイン煮」(¥500)、「シャトージュン マスカットベーリーA -ミレーラベル 夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い-」(ボトル¥2,800。カラフェ¥2,000、グラス¥500でもオーダー可能)

ガンゲット・ラ・シェーブル

飲んで食べて、楽しくなれば歌い踊る人も現れて……その昔パリで始まった気軽で飾らない居酒屋が"ガンゲット"。浅草で焼き鳥とワインを提案してきた「萬鳥」本店が閉店し、2013年7月に「ガンゲット・ラ・シェーブル」としてリニューアル。テーブル22席のほか、カウンターが4席、テラスにも2卓4席を備える。営業時間が14時~23時というのもうれしい。大勢で集まるもよし、カウンターで一人晩酌するもよし、明るい時間からほろ酔いになるもよし。浅草に誕生した、その人次第で自由に楽しめる"ガンゲット"だ。カード使用可(VISA、MASTER)。

DATA ガンゲット・ラ・シェーブル
東京都台東区西浅草2-2-13
電話 03-3845-4430
営業時間 14:00~23:00
定休日 火曜、第2水曜
http://www.chevre.jp/