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マリアージュを楽しむ

第二十五回シャトージュンとマリアージュするひと皿 銀座ぶどうの木の「春いちごのミルフィーユ」×「シャトージュン ミレーシリーズ鶏に餌をやる女 ロゼ」のマリアージュ

食の世界は言うまでもなく実に多様で、その楽しみ方も無数に存在する。ワインも然り。マリアージュは料理に限定されているわけではないし、デザートと合わせる際にデザートワインでなければならないという決まりもない。今回はロゼワインをテーマに、シリーズ初となるデザートとのマリアージュをご紹介したい。案内役は「銀座ぶどうの木」。日本におけるアシェット・デセール専門店の草分けが、今また新たにワインの楽しみを広げる甘美な世界へと導いてくれる。

アシェット・デセール(皿盛りのデザート)専門店「銀座ぶどうの木」の初代店舗が誕生したのは1979年。奇しくもシャトージュンが山梨県勝沼町にワイナリーを構えたのと同じ年である。日本において洋菓子もワイン造りも黎明期だったこの時代に両者が産声をあげ、35年以上経った現在も変わらず味を追求し、洋菓子やワインを通して人々の暮らしに豊かな彩りを提供しようとしていることは非常に意義深いことといえよう。
「銀座ぶどうの木」の創業当時、本格的なできたてのデザートが味わえる場所は一流のフレンチレストランだけだった。フルコースの最後を飾るアシェット・デセールを単独で味わえるデザート専門店は、当時エポックメイキングな業態だったのだ。“できたてのお菓子をその場で召し上がっていただきたい”という信条はオープンから変わらず、注文を受けてから一皿一皿を作る。信条は変わらないが、社会もトレンドもお客様から求められるものも変化する。2014年に創業以来初の移転・新装オープンにあたり、パリのサロン・ド・テを思わせる内装や雰囲気はそのままに、伝統のメニューを含めすべてのレシピを今の時代に合わせて一新したという。現在は冷製・温製を含め定番デセールを7皿、季節のデセールを1〜4皿提供している。見た目にも美しいデセールは、特別なひとときを味わう“ハレ”の食べ物。そこには飲み物の存在も不可欠だ。それでは、「銀座ぶどうの木」ではどんな飲み物をそろえているのだろうか。

シャトージュン ミレーシリーズ
鶏に餌をやる女 ロゼ
シャトージュンのラインアップのなかでも特徴的な、山梨県立美術館所蔵のミレーの絵画をラベルと商品名に冠したシリーズ。現在発売中の2015年出荷分は山梨県産の巨峰を100%使用。やや甘口に仕上げているが酸もあり、食中酒にもおすすめ。おでんやトマトソースを使ったイタリアン、カジュアルな中華料理など、旨味と甘みを併せもつ料理と好相性。シャトージュンのエントリーラインといえる価格帯で、手軽に楽しめるワイン。
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創業当時からの人気メニューを進化させた温デセール「クレープ シュゼット」(¥1,800)。
季節ごとに厳選したオレンジを使い、お客様の目前でフランベして仕上げる。果実を伝う炎とともに香りが一気に広がるさまは視覚にも嗅覚にも“おいしい”刺激を与えてくれる。オレンジの酸味、洋酒の香り、バターのコクをまとった生地にマカダミアナッツのパルフェを添えて完成。「シャトージュンの甲州がもつ柑橘系のほどよい果実味とキレのよい酸味がソースとマッチ。甲州は季節のデセール「柑橘フルーツのジュレ」(2016年5月末まで提供予定)とも好相性です」(中井さん)。

「もちろんコーヒーや紅茶、ハーブティーといったソフトドリンクはデセールとの相性とクオリティの追求を続けています。そのうえで、お客様に新たな発見やサプライズをお届けしたいと、移転オープンしたのちに本格的にワインのご提供を始めました」と語るのは、ソムリエールでもある店長の中井ゆき子さん。現在はできたてのデセールとのマリアージュを提案すべく、スパークリングワイン、白、赤、デザートワインとひと通りをグラスで提供している。シャトージュンからは今回マリアージュを提案する「ミレーシリーズ」のほか、「スパークリング 白」、「セレクト ロゼ」、「甲州2014」と全4種類がオンリストされている(2016年3月現在)。「実は、移転当初は日本のワインを入れていませんでした。デセールと相性のよいワインが増えてきたこともあり、日本ワインの魅力やデセールとのマリアージュをお客様にご紹介したいと最近取り扱いを始めたんです」(中井さん)。なかでもシャトージュンのワインには、「銀座ぶどうの木」が提供したい味や空間、雰囲気などに共通する点を多く感じたという。「当店には移転前の店舗からのお客様も多く、銀座に集うマダム、ムッシュにふさわしいエレンガンスや彼らの求める雰囲気、空気感をご提供したいと考えております。シャトージュンはよい意味で主張が強すぎず、遊びや冒険に走りすぎていないところが魅力。気取ったところもなく、お客様が肩肘を張らず楽しめるワインですね。かといって無個性というわけではなく、それぞれに存在感があってしっかりと1種類のワイン×デセール1品のマリアージュを提案することができます」(中井さん)。

中井さんが季節のメニュー「春いちごのミルフィーユ」に合わせたのは「鶏に餌をやる女 ロゼ」だ。「口に含んだ瞬間に摘みたていちごそのもののようだと感じたワイン。フレッシュな香りもふんわり漂う甘やかさも、ベリー系の果実というよりピンポイントでいちごですね。やや甘口ですが、清冽な酸もしっかり。媚びない伸びやかさがあってデセールと合わせても味がきりっと締まります。甘いものに甘いワインを合わせるとダレた味わいになってしまいがちですが、これは寄り添うのではなくお互いを引き立てるマリアージュ」(中井さん)。甘酸っぱいフレッシュな春いちごとソルベ、さくっと軽やかな食感が楽しめる香ばしいパイ、まろやかで濃厚なカスタードクリームが口のなかで一体となって味わいを奏でるミルフィーユ。そこに「鶏に餌をやる女 ロゼ」が甘さだけを重ねるのではなく、香りをより華やかにし、凛とした酸を添え、心地よい余韻を与える。ナイフとフォークを置いた後、きっとあなたはワインとデセールのマリアージュが誘う新しい味わいの世界に驚くはずだ。「優雅なひとときだけでなく、“ワインとデセールってこんなにおいしいんだ”という楽しいサプライズをお客様に感じていただけたらこんなに嬉しいことはありません」(中井さん)。

内装は35年近く前に創業した前店舗のクラシックで温かみのあるイメージを踏襲。
20年以上前から店内を飾る絵画と葡萄のレリーフ(写真左)や2014年に移転する際に新たに設置したレリーフ(写真右)など、時の流れを感じる内装も趣深い。

“できたてならではのおいしさを今この瞬間に味わっていただきたい”という創業時からの願いは、“今この瞬間”にかけるこだわりが詰まっている。食器がひとつひとつ手描きされたものであることもその一端だ。「食器の絵はポーセリンアーティストである原宿陶画舎の絵付講師たちの手で1点ずつ描かれています。世界でただひとつの場所で、世界にひとつだけの手描きの器で、今ここでこの瞬間にしか味わえないできたてのおいしさを提供したい……。私たちにしかできないこととは? ここでしか味わえないこととは? と、常に目の前のお客様にどうしたら喜んでいただけるかを考えています。食器もワインのご提供もそのためです。本格的にワインとのマリアージュを提案しているデセールの専門店はまだ数少ないのではないでしょうか。アシェット・デセール専門店の先駆者的存在だった店として、フランス菓子の伝統を守りつつ、時代の変化に敏感でありたいと思っています。デセールとワインのマリアージュのように、新しい価値を積極的にお届けしたいですね」(中井さん)。食の世界に横たわる、無数のまだ知らぬ豊かな楽しみ。そのひとつを、ぜひ「銀座ぶどうの木」でシャトージュンのワインとともに味わっていただきたい。

「春いちごのミルフィーユ」(¥1,800/2016年5月末まで提供予定)、「シャトージュン ミレーシリーズ鶏に餌をやる女 ロゼ」
(グラス¥1,000、春いちごのミルフィーユとセットにする場合は+¥800) ※記事内の価格はすべて税抜き。

銀座ぶどうの木

歴史あるアシェット・デセール(皿盛りのデザート)専門店が東京都・銀座のあづま通りから2014年に銀座5丁目の西五番街に移転・新装オープン。「ぶどうの木」グループの新本店ビル「座STONE ザ・ストーン」の2Fに店舗を構え、銀座の老舗フレンチやフランスで修業したシェフ・パティシエの金井幹雄氏が腕を振るう。レシピをブラッシュアップさせた伝統の一皿からシェフオリジナルの新作、季節のデセールまでをラインアップ。ソフトドリンクやアルコールと共に味わうことができる。全34席。1Fは同グループが運営するバームクーヘン専門店「ねんりん家」銀座本店。

DATA 銀座ぶどうの木
東京都中央区銀座5-6-15 座STONE2F
電話 03-5537-3140
営業時間 11:00~19:15LO
     (日・祝は18:15LO)
無休(年末年始を除く)
http://www.budonoki.jp/