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マリアージュを楽しむ

第十九回シャトージュンとマリアージュするひと皿 「筍焼き」× シャトージュン35周年甲州2013のマリアージュ

シャトージュン35周年 甲州2013 シャトージュンの看板キュヴェ、甲州。時期を見極めて収穫した甲州をステンレスタンクで低温発酵させ、葡萄の果実味をしっかりと反映させた辛口タイプのワイン。Japan Wine Competition 2014にて銅賞を受賞。こちらはシャトージュン創設35周年を記念したシリアルナンバー付きのボトルであると共に、香りと味わいのバランスがきれいに仕上がった時にしか発売しないリボンシリーズのワインでもある。白ワインでは初のリボンシリーズ。
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ソムリエ出身の板前が“和食に合うワイン”として選んだのは日本のワインだった――。和酒とワインの両方が堪能できる「四谷ふく」。食から季節の移り変わりがはっきりと感じられるこの国にあって、旬の食材とそれに寄り添う酒が楽しめるのは何よりの“口福”だ。今回は、春の旬菜と甲州の組み合わせをお届けする。

四谷四丁目、新宿通りから1本入った路地裏の地下に佇む「四谷ふく」。新宿にありながら、都会の喧騒を忘れさせてくれる隠れ家のような和食店だ。店内に入ると、銀杏の一枚板を使った存在感たっぷりのカウンターがゲストを迎える。席と席の間隔も広く、ゆったりと落ちつける空間はまさに“大人の隠れ家”。店主の福田智則氏は、ソムリエとしてレストランに勤務していた経歴をもつ。その後、ワインに強い和食店に調理師として入ったことをきっかけに、ワインと和食のマリアージュについての見識を深めていったという。共に店を営む女将の美穂さんは、唎酒師と焼酎アドバイザーの資格をもつ。和食ならではの四季折々の食材を使った料理と和洋の酒が堪能できる一軒なのだ。料理人として研鑽を積むうち、“和食に合うのは日本のワイン”と実感したという福田氏。休日を利用して国内のワイナリーを訪ね、できるだけ直接造り手から話を聞いたワインを備えているという。「和食にマッチする味わいに加え、休日に少し足をのばせば造り手にまで会うことができるというのは日本ワインの大きな魅力です」(福田氏)。


当初はレストランにソムリエとして勤務していた店主の福田智則氏(写真左)。季節の食材を活かした料理のほか、毎日手打ちする蕎麦、熊本・あか牛のコースやすっぽんのコースなども揃える。月替りで日本酒、焼酎、ワインそれぞれの“今月の酒”を提案しているのもこの店ならでは。

オープン当初からの定番名物料理「ふくかつ」(¥2,560/写真右)。赤ワインと香味野菜で柔らかく炊いた豚肩ロース肉を醤油と砂糖で甘じょっぱく味付けして揚げたもの。福田氏曰く、「赤・白ワイン、焼酎……どんな酒でも受け止めてくれる味です」。

ここ10年ほど勝沼のワイナリーを年数回訪ね、剪定や傘掛けなどの手伝いをしていた彼がシャトージュンのワインに出合ったのは3~4年前。「やわらかなタッチでまろやか、ほんのり甘みがあるワインというのが最初の印象です。中口を好むお客様に向けて店にも少し仕入れることにしました」。がらりと印象が変わったのが2013年のヴィンテージ。「それ以前よりもドライな仕上がりの辛口で、そこから葡萄栽培者を意識した造りをされていることを知って興味を覚えました。シャトージュンのワインを本格的にオンリストしたのはそれ以降。現在は甲州とセミヨンを置いています。やわらかな印象の甲州と強さのあるシャルドネの中間に楽しんでいただくのに、果実味に凝縮感があってバランスのよいシャトージュンのセミヨンはぴったりなんです。甲州の後に飲んで欲しいワインですね」。

今回「シャトージュン35周年 甲州2013」に合わせた料理は、シンプルに季節の滋味をそのままいただく「筍焼き」。「ドライながらまろやかさとやさしさのあるこのワインは和の食材全般と相性がいいんです。特に、強い味付けをするものではなく食材そのものを楽しむ料理とマッチします。アク抜きした筍を焼いてさっと醤油を塗っただけの筍焼きとの相性は抜群。マリアージュという言葉ではなく、お互いに“寄り添う”という表現がぴったりだと思います。

重厚な一枚板のカウンター。食器類は各地のワイナリーや食材の産地を訪れた際に手に入れたものが多い(写真上)。テーブル席のほか、落ち着ける個室スペースも用意(写真下)。

私見では日本酒的なアプローチ。ワインというよりも、日本の食材、日本の料理と楽しむ“日本のお酒”としてご提案したいですね」。2種類のたれと登場する「筍焼き」。まずはそのままひとくち。口いっぱいに広がる豊かな香りは、季節を五感で捉えるかのごとく鼻孔に抜け、食べる者に春一番の“口福”をもたらす。それを邪魔せず、かといって物足りなさを抱かせることもなく、そっと寄り添うのがシャトージュンの甲州だ。続いて白ごま油と藻塩、蕗味噌と食べ進めても、けして甲州が力負けすることはない。筍に加わった新たな表情に合わせてワインが寄り添ってくれるのだ。

店主自ら訪ねたワイナリーを中心に、希少な銘柄を含め約180種類と充実の品揃えを誇る日本のワインに加え各国のワイン、日本酒、焼酎をストックする「四谷ふく」。ここでは酒のプロである店主と女将が、それぞれの料理やゲストの好みにぴったりの酒を提案してくれる。「日本のワインをおすすめすることが多いですが、国や酒のタイプを問わず、酒全般を食事と楽しんでいただきたいですね」。店内に満ちる、旬の味と多彩な酒が織りなす “口福”を存分に味わってほしいという心意気は喧騒を忘れて楽しむ一献をより旨くする。まずは、春の訪れから美味なる福を感じてみてはいかがだろう。

「筍焼き」(¥1,800/4月末まで登場予定の季節限定メニュー)、「シャトージュン35周年 甲州2013」(ボトル¥7,300)※記事内の価格はすべて税込。

四谷ふく

四谷三丁目駅と新宿御苑前駅からそれぞれ徒歩約5分。新宿通りを1本裏に入った半地下の隠れ家が「四谷ふく」。ソムリエから転身した店主と、唎酒師・焼酎アドバイザーの資格をもつ女将が“自分たちが行きたいお店を作りたい”と2007年11月にオープンした和食店だ。ゆっくり寛げる落ち着いた空間のなか、旬の食材を活かした料理、毎日手打ちする蕎麦、豊富に取り揃えた和洋の酒で訪れる人に “口福”を味わわせてくれる一軒。カウンター7席とテーブル席のほかに個室も備え、友人との気のおけない語らいからビジネスシーンまで、人数と目的に合わせて幅広く活用できる。カウンター席では21時以降のバー利用も可能。

DATA 四谷ふく
東京都新宿区四谷4-28-8 パルトビルB1
電話 03-3356-1948
営業時間 17:00~23:00LO(土曜~22:00LO)
定休日 日曜、祝日の月曜
http://www.yotsuya-fuku.com/