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マリアージュを楽しむ

第十二回シャトージュンとマリアージュするひと皿美味サライ 2013秋号より 美味サライ 2013秋号より広尾 一会懐石料理に合う、生産者が見える甲州ワイン

「甲州」を含む、3品種の白ワインを揃えている。「シャルドネ」ボトル7350円(右)、辛口に仕上げた「セミヨン」ボトル6825円。

実直な料理が味わえると評判の懐石料理店、『広尾 一会』。店主の渡部純一さんは、料理するときの心構えを、「素材の足を引っ張らないこと」と話す。

時間をかけ、生産者や仲買業者との強い信頼関係を築き上げてきたからこそ手に入る、選りすぐりの素材。その一つ一つと真摯に向き合い、丁寧な仕事を施し、紡ぎ出された料理は潔いほどにシンプルで奥深い。渡部さんは、そのような自身の料理とともに提供する日本ワインとして、シャトージュンを選んだ。初めて口にした際、「うちの料理に合う」と直感したのだと言う。

水はけのよい扇状地で、江戸時代から葡萄栽培に向いた土地として知られる、山梨県は勝沼町。適地に醸造所を構えるシャトージュンは、葡萄を育む栽培者の顔が見えるワイン造りに努めている。栽培者ごとにタンクを変えているため、仕上がりは同じ銘柄でも栽培者(圃場)によって微妙に違う、それぞれの味に醸される。ボトルの裏ラベルには栽培者の名前が明記されており、そこに、醸造家と栽培者との絆が見てとれるようだ。

そんなシャトージュンの白ワイン「甲州」は、ほのかな甘さとキレのよい酸味があり、吟醸酒にも似たニュアンスを持つ。奥行きのある出し汁に調和し、懐石コースの初めから終わりまでを通して堪能することができる。ともに、素材の個性を尊重して生み出されたワインと料理。しっくりと馴染む、至福の組み合わせだ。

取材・文/安井洋子
撮影/多賀谷敏雄

メニューは1万2600円のコースのみ。
写真は初秋の献立で、手前は「グジの竜田揚げ」と「茗荷のお浸し」、奥は「茄子の焼き浸し」。
「甲州」はボトル6090円。

広尾 一会

DATA 東京都渋谷区広尾 5-16-16 エクセルシロタ地下1階
電話 03-3280-1439
営業時間 18:00〜23:00(最終入店:20:30)
定休日 火曜

JUNICHI WATABE

店主の渡部純一さん(43歳)は、『霞町すゑとみ』を経て 2008年に自店『広尾 一会』を開いた。