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マリアージュを楽しむ

ワインジャーナリスト、有坂芙美子さんと楽しむ、泉岳寺門前 紋屋の「旬が活きる料理」×「シャトージュン 甲州2011」のマリアージュ 第六回シャトージュンとマリアージュするひと皿 SPECIAL Vol.1

シャトージュン 甲州2011
洋梨、花梨、メロンなどを思わせる瑞々しくフルーティな香り。糖度の高い葡萄をステンレスタンクで低温発酵し、"果実の風味をそのままビン詰めする"ことを目指したワイン。クリームを思わせるまろやかなニュアンスも。2010年ヴィンテージよりもやや甘みを感じさせる仕上がり。酸と甘さのバランスがよい、中口タイプの仕上がり。「シャトージュン 甲州」は2012年からJAL国際線エグゼクティブクラスの機内用ワインとして提供されている。
(写真のヴィンテージは2009年)
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写真左から 有坂芙美子氏、「冷やし煮物ゼリー寄せ」(7月のコース中の一品)、「富山の夏河豚の炙り」(今回の企画もために考案したメニュー)、「シャトージュン シャルドネ2011」。※2皿とも要望の際には事前にお電話で確認を。

JALの国際線で提供される「JALワインセレクション」のラインナップに今年の1月より加わった「シャトージュン」(搭載銘柄は「甲州」)。今月と来月公開の「シャトージュンとマリアージュするひと皿」は、スペシャルバージョン! 「JALワインセレクション」の選定にも携わる、日本を代表するジャーナリスト・有坂芙美子氏が「シャトージュン 甲州」「シャトージュン シャルドネ」の最新ヴィンテージと、富山の地魚を使った懐石料理で知られる「泉岳寺門前 紋屋」の料理とのマリアージュを語る。

2012年の年始に刷新された「JALワインセレクション」は、600種類から19本のワインが選ばれたという。ソムリエ資格をもつ客室乗務員と共に"その土地の個性やワインの造り手が込めた想い等が想像できるワイン"を念頭におきセレクトに携わったのが、ワインジャーナリストの有坂芙美子さんだ。
「シャトージュンの醸造が行われている山梨は、日本のワイン作りが始まった地域。日本独自の品種である甲州の栽培が始められたのも山梨県です。今なお甲州作りがさかんな山梨、水はけのよい土地を活かしてメルローやシャルドネを栽培する長野、山ブドウを活かす山形。日本のワイン産地は、葡萄の産地としての地方性が色濃く反映されてきたように思います。それに加え、国内でワインコンクールがスタートしたことや大手のワインメーカーばかりではなく小規模や個人の醸造家が台頭してきたことによって、日本のワイン全体への評価や注目度、また味わい自体の水準が高まってきたといえます。私自身も、"産地""葡萄品種"に加え、"誰が造っているか"が日本のワインを選ぶ基準となりました。国内外問わず、畑がいいからいいワインが生まれるという訳ではありません。作り手の哲学や発想、センス、葡萄への観察力などが合わさって個性を感じさせるワインが生まれるのだと思っています。先日「シャトージュン」の醸造責任者である仁林欣也さんを訪ねて感じたのは、葡萄と対話をしてじっくり考えながらワインを作っている人という印象。ユニークで個性的なワインをこれから作っていかれるのでは、と思いましたね」。

1.「甲州のフレッシュな香りに各々の料理に効かせた柚子の爽やかな香り。
香りは暑いなかでも食欲を刺激してくれますね」。(有坂さん)。
2.7席を備えたカウンター。浅沼料理長と有坂さん。
3.カウンターには、新鮮な旬の野菜や富山から直送した魚がずらりと並ぶ。
4.今回マリアージュのために用意した「シャトージュン 甲州 2011」(左)、「シャトージュン シャルドネ 2011」。共に「泉岳寺門前 紋屋」にオンリストされている。
有坂芙美子

ワインジャーナリスト。日本初のワイン専門誌『ヴィノテーク』の創業者であり、アカデミー・デュ・ヴァンやJALのワイン・アドバイザー、国内外のワインコンクールの審査員など、日本を代表するワインジャーナリストとして活躍している。国境を越えてリースリングを愛するインポーター、ワイン振興会などが集う「リースリング・リング」をはじめ、さまざまなワイン団体、振興会、イベントの主宰や発起人としても精力的に活動。9月3日はボルドーワインの愛好家の集い「コマンダリー・ド・ボルドー東京」の親睦会を東京ソラマチで、9月20、21日はアグネスホテル東京で東日本大震災へ向けたチャリティワインイベント「WINE AID FOR EAST JAPAN」の開催を予定している。

「日本のワインのなかでは、独自の品種である甲州を外国の方にお勧めしています。ナチュラルで優しいという従来の印象に加え、シュール・リー製法(醸造過程において、発酵後も澱引きをせずに樽のなかでワインと一緒に熟成させる方法)で作ったものなど、最近は「以前よりも甲州により個性を感じる」という反応が増えたように思います」。
抜栓したばかりの「シャトージュン 甲州 2011」をまずテイスティング。
「色はほんのりとペールグリーンが感じられますね。香りには青りんごや白桃を思わせる、甘さを伴った優しい印象があります。口に含むと、樹齢の高さが伺えるような凝縮感が広がります。ワインだけでアペリティフにするのもぴったり」。

今回「泉岳寺門前 紋屋」が甲州とのマリアージュを考えて用意した旬の料理は、「富山の夏河豚の炙り」と「冷やし煮物ゼリー寄せ」の2皿。どちらも、富山の食材をメインに、旬の素材をたっぷりと使用したメニューだ。日本海で5〜8月の間に捕れる夏河豚をさっと炙り、香りが新鮮なミョウガと芽ねぎ、甘さのある玉ねぎを添え、柚子胡椒を加えた土佐酢で作ったゼリーを合わせたのが「富山の夏河豚の炙り」。通常のメニューには登場せず、"旬の素材を使って「シャトージュン 甲州」とのマリアージュを"と創作されたものだ。「強すぎず、穏やかすぎずという酸味のバランスがとれた料理がこのワインとマッチするように思い、試作を重ねました。また、ワインの甘みと響き合うよう、ほんのり甘さも加えています」とは料理長の淺沼朋彦さん。「酸味や甘さといった甲州の優しさがゼリーと調和していますね。ゼリーに効かせた柚子の果実味が、甲州の隠れた部分を引き出しているような印象。弾力のある河豚をよく噛むことで、料理とワイン、各々の香りや旨みもより深く感じられる。ニュートラルな性質をもつ甲州が、この料理と出合って新たな味の世界を開いたように思います。料理人がきっちりとワインの特徴を考えて引き出された、"出合いあるマリアージュ"」。

2皿めに登場した「冷やし煮物のゼリー寄せ」は、7月のコースで登場していたもの。「それぞれ別に火入れした才巻海老、カスベ、冬瓜、隠元、石川芋を、青柚子を少し加えた出汁のゼリーで包みました。生雲丹もプラスしています。まわりには、柚子の香りを加えた少し甘めの玉味噌を添えています」と、淺沼さんと2人で今回のメニューを考案したホール長の曽我部 薫さん。「時間が経って甲州の香りが開いてきて、甘さも溶けこんできましたね。最初は酸味やフルーツの甘さが目立ちましたが、ふくよかさが感じられるようになりました。この柔らかさ、ふくよかさが、丁寧に火入れをした野菜の味わいや、上品かつしっかりした旨みを感じる味噌とぴったりと合います。こちらに限らず、"味噌とワインは合う"は持論なんですよ(笑)。味噌の後味に柚子の爽やかさが追いかけてくるのも、この季節にぴったり。抜栓したての甲州に河豚、開いてきてふくよかさが感じられたところに冷やし煮物と、飲むタイミングもベスト。特に、河豚と甲州によって生まれる味わいは"初めて出合う味"でしたね。料理人がワインから啓発されて、イマジネーションを広げて料理が生み出されることの素晴らしさを実感しました」。
作り手の個性を感じさせるワイン、旬の食材、そのマリアージュをしっかりと考えた料理。その出合いが、甲州の新しい世界を拓くのみならず、有坂さんにも"初めて出合う味"をもたらしたようだ。


>> 9月25日公開の「シャトージュンとマリアージュするひと皿 Vol.2」では、引き続き有坂芙美子さんをナビゲート役に迎え、「泉岳寺 紋屋」を代表する一品と「シャトージュン シャルドネ 2011」の相性を探る。

シャトージュンが楽しめる店 泉岳寺門前 紋屋

魚、野菜、酒、米、水……富山の恵みをふんだんに用いた料理で知られる「紋屋」。泉岳寺の境内に店を構える「泉岳寺門前 紋屋」は、カウンター、テーブル、6つの個室と、抜群の立地のもと昼、夜と異なった風情ある表情を見せる。泉岳寺の借景はもちろん、元大使館関係の一軒家という作りを残した大きな暖炉も特徴的。ランチ(¥1,890〜)、ディナー(コース¥12,600〜)ともに、富山から直送した旬の海の幸を楽しむことができる。ディナーはアラカルトも用意
(1階のカウンターとテーブル席で対応。個室はコースのみ)。カード使用可。

DATA 泉岳寺門前 紋屋
東京都港区高輪2-11-6
電話 03-5447-1333
営業時間
月〜金:11:50~14:00(月曜は昼定休)、17:30~22:30
土、日、祝日:11:30〜14:30、17:00〜22:00
定休日 月曜(昼)
http://www.monya.org/